
→「ズル」を防ぐためのルール!
お疲れ様です、のぶろっくです!
「インフィールドフライ」というルールをご存知でしょうか。
野球を知らない人にとっては、わけのわからんルールだと思います。
しかし、これ色んな意味で結構重要なルールなんです。
1.もし、このルールがなかったら・・・
もしこのルールがなかったらのお話をします。
例えば、ノーアウト一、二塁で内野フライが上がったとします。
野球では打球がダイレクトで(ノーバウンドで)捕球された場合、ランナーは一旦自分のいた塁に戻らなきゃいけないというルールがあります。
なので、このときのように平凡なフライが上がると、ランナーは常識的に「あぁこりゃとられるわ」と判断して、フライが上がっている間に自分のいた塁に戻ろうとします。
しかし、もしこのフライを野手がわざと落としたらどうなりますか?
バッターランナーはアウトになりません。
しかもランナー一、二塁なので塁は詰まっています。
つまり、ランナーは次の塁に進まなきゃいけなくなるのです。
ランナーからしたらたまったもんじゃありません。
「とらへんのかい!!」みたいな。

実際、各ランナーは自分のいた塁の近くにいるので次の塁に行くまでに多少の時間がかかります。
なので、野手はボールをわざと落して素早く各塁に送球すれば、全てのランナーをアウトにできてしまう可能性があるです。
2.インフィールドフライは「ズル」を防ぐため!

こういう、ランナーを貶めるようなプレーを防ぐために「インフィールドフライ」があります。
ランナー一、二塁のときと満塁のときに内野フライが上がった場合、審判がインフィールドフライを宣告します。
するとその時点で、そのフライを野手がとっても落としてもバッターがアウトになるのです。
これでさっき説明したようなわざと落して…みたいなことを防げるわけです。
よくできたルールでしょう?
しかし、このルールのせいで野球界では昔から数々の珍プレーが生まれているのです。
3.複雑がゆえに、こんな珍プレーが・・・
<1991年6月5日、大洋対広島戦>
2-2の同点で迎えた9回裏、大洋の攻撃で一死満塁という場面でした。
ここで、大洋の打者・清水は本塁付近にフライを打ち上げてしまいます。
これに対して審判はインフィールドフライを宣告しました。
これでこのフライをとっても取らなくても打者の清水はアウトになります(この時点で二死満塁)。
ところが、広島の捕手・達川はこのフライをわざと落としてからすぐ拾い、本塁を踏んで一塁に送球したのです。
達川からしたら、「これで三塁ランナーもバッターもアウトだ。スリーアウトチェンジにしてやったぞ」とほくそ笑んでいたことでしょう。
味方の野手もこれでスリーアウトチェンジだと思ってベンチに引き上げようとしていました。
さらに、大洋の三塁走者・山崎も達川が本塁を踏んだのを見て自分もアウトになったと思い、本塁を踏まずにとぼとぼとベンチに引き上げようとしていました。
しかし、ベンチに戻ろうとした山崎は突然振り返り、本塁に向かい、本塁を踏みました。
これを確認した審判は得点を認め、大洋のサヨナラ勝ちが決まったのです。
何が起こったか、理解できましたか?
もう一度、振り返ってみましょう。
打者の清水が打球を打ち上げ、審判はインフィールドフライを宣告しました。
その後、捕手の達川は、わざとそのフライを落としてから素早く拾い、本塁をを踏んでから一塁に送球しました。
この行為が全く無意味であることがおわかりいただけるでしょうか。
達川は打球をわざと落とし拾ってから本塁を踏んだことで、三塁ランナーをアウトにしたと思っていたのでしょう。
しかし、すでにインフィールドフライが宣告されています。
その打球を捕ろうが落とそうが打者はアウトになります。
つまり、インフィールドフライが宣告された時点でランナーのフォースが解かれるので、各ランナーをアウトにしたい場合はタッチせねばなりません。
ベースを踏んだところで何も起こりません。
一塁に送球したところでバッターは既にアウトになってるわけで、これまた何も起こりません。
状況としてはツーアウト満塁のままです。
しかし、広島の選手たちはスリーアウトチェンジだと思ってベンチに引き上げようとしていました。
三塁走者の山崎も勘違いしてベンチに引き上げようとしました。
ところが、山崎はベンチに向かおうとした直後、突然振り返って本塁に向かいました。
これは一体どういうことでしょう。
実は味方である大洋ベンチから、引き上げようとしていた山崎に、猛然と「本塁を踏めー!!」と指示が出ていました。
つまり大洋ベンチは気づいていたのです。
「まだツーアウトだ。しかも敵はその事実に気づかず引き上げようとしている。今おまえが本塁を踏めばサヨナラ勝ちだぞ」と。
慌てて山崎が本塁を踏みに行ったのはこのためです。
これで大洋のサヨナラ勝ちが決まりました。
広島側はこのプレーに「なんで点が入るんだ!」と猛抗議をするのですが、滑稽ですよね。
自分たちの無知を曝しているようなものですから。
ですが、プロの選手でも間違えてしまうこともあるくらい、野球は複雑で難しいスポーツなのです。
・・・ここで話が終わりと思いきや、実はこの試合にはちょっとした続きがあります。
<2015年5月4日、広島対巨人戦>
状況は9回裏2-2の同点、広島の攻撃で一死満塁と、前試合とほぼ同じような状況です。
ここで広島の打者小窪は本塁付近に飛球を打ち上げてしまいます。
審判はインフィールドフライを宣告しました。
これで打者小窪はアウト。
野手がこの飛球をとっても落としても小窪はアウトです。
ところが、捕球を試みた三塁手・村田と一塁手・フランシスコが連携ミス(いわゆるお見合い)で飛球を落としてしまったのです。

一塁手のフランシスコは慌ててボールを拾い、本塁を踏みました。
この行為が全く無意味であることはもうおわかりですよね。
先ほどと同じ理屈です。
インフィールドフライが宣告されているので、ランナーはフォースが解かれています。
飛球をとろうが落とそうが、ランナーをアウトにしたい場合はタッチせねばなりません。
落ちた飛球を拾ったフランシスコは本塁を踏みましたが、ランナーはフォースを解かれているのでベースを踏んだところで何も起こりません。
そして、フランシスコがよそ見をしている間に三塁走者の野間がちゃっかり本塁に突入。これで得点が認められ、サヨナラ勝ちが決まるはずでした。
ところが、球審はなんとアウトを宣告しました。

完全なミスジャッジです(余談ですが、彼らの名誉のためにも書かせていただくと、審判もプロです。野球の審判は非常によく鍛えられています。ストライクかボールかのように、一瞬の判断が試される状況だと、審判も人間なので多少間違ってしまうことがあるかもしれませんが、今回のようにルールを根拠にしたジャッジで間違うことはまずありません。しかし、百戦錬磨の審判でも判断を誤ってしまうほど、余りにもいろんなことが同時におこった難しいプレーであったといえます)。
この判定に広島サイドからある2人の人物が飛び出し、激しく抗議をしました。

「あんたインフィールドフライを宣告したじゃないか!得点は認められるだろう!」と。
これを受けた球審は判定を取り消し広島の得点が認められ、広島のサヨナラ勝ちが決まったのです。

さて、この広島サイドから飛び出した2人とは一体誰でしょう。
緒方監督(当時)と石井コーチ(当時)です。
なんとこの2人、前述した1991年の試合に選手として出場していました(緒方監督は広島の中堅手として、石井コーチは大洋の遊撃手として)。
自分たちが経験したプレーと同じようなことが目の前で起こったために、難しいプレーにも関わらず即座に飛び出すことが出来たのです。
「キターー!!」と思ったことでしょう。
5.最後に
他にも様々な珍プレーが野球界には数多く存在するのですが、その多くが精巧に作られたこの野球のルールたちがもとになっています。
皆さんがこのようなプレーの被害者とならないよう、頭を使って野球を楽しみましょう!
